成年後見申立ての動機

成年後見の申立ては、様々な動機でなされます。

もちろん判断能力を失ってしまった方を保護するために、後見人を選任したい、という方もいらっしゃいますが、中には、成年後見人になれば、成年被後見人の財産をほしいままに処分できる、と誤解して、自分を成年後見人候補者とした申立てを行おうとする方もいます。

そういった動機を家庭裁判所が知るところとなれば(家裁は申立人に対する面談を通じてなんで申し立てたのか、ということを聞きます)、申立人が成年後見人に選ばれることはありません。成年後見制度は、認知症や精神障害等で判断能力を失った方を保護するために民法が用意した制度であるためです。家族であれなんであれ、財産を横領しそうな方は選びません(管理する財産が多すぎる場合なども第三者後見人が選ばれることがありケースバイケース)。

しかしどういう動機にせよ申立てを一旦行なってしまえば、家庭裁判所は成年後見人を選任します。候補者が適切でなければ第三者を後見人に選ぶのです・・・そういった経緯で、我々司法書士が第三者として成年後見人に選任されることがあります。

いきなり修羅場です

選任されて家裁から事件記録を取り寄せます。成年被後見人の財産目録などを見ながら、申立人と財産引き継ぎの打ち合わせの電話(申立書に電話番号を記載する欄があります)を入れます。するといきなり、電話口で申立人から文句を言われるわけです。

「私が後見人になるつもりだったのに」「今までもずっと私が管理してきた。問題は起こしていない」「後見人に報酬を払うなんて考えてなかった」と。

成年後見制度について誤解をしたまま申立てをしたということですが、この申立て手続に、弁護士や司法書士が関与していることが結構あります。当然、成年後見制度について知っているはずです。申立人にそういった説明はしなかったのだろうか、ちゃんと説明しといてくれよ、と正直腹が立つわけです。

説明はすべきだが、しかし・・・

しかし、彼らが仮にちゃんと説明していたとしたらどうなっていたでしょう?

申立人は自分の思い通りにならないのならば、申立書類を作ってもらう報酬を弁護士や司法書士に支払ってまで申立てはしなかったでしょう。申立てがなければ成年後見人がつくことはありません。後見開始の審判が出たということは、判断能力を失っていることは確かなので、ご本人は自ら財産管理をすることはできません。預金をカードで下ろされたり、自宅を事実上占拠されるなどの事実行為は防ぐことができません。後見人がつけば、そういったことに対する防御は可能です。

もっとも、申立書を作った弁護士や司法書士は、申立人に対し、説明義務違反に問われる可能性はあります。

成年後見の申立てでは申立人が確保できずに困るというケースもあります。どういう動機であれ、申立てを行なってくれる方がご本人にとってはいいという側面もあるのです。依頼人の意向に背いてまで申立てをやってくれたその弁護士・司法書士に、ご本人は感謝すべきなのかもしれません。

しかし・・・いきなり関係悪い状態から始まるのは正直キツいですね。