最近よく相談を受ける案件です。

お子さんからの相談です。実家に一人で暮らす親が認知症になり、施設入所を進めている。

施設入所が決まれば実家の不動産は無人になり、管理が難しくなるので売却するか、賃貸するなど行いたい、というものです。

しかし、実家の不動産の名義人は認知症になっているため、親御さんにはそういった契約を行うことができないことが問題になります。

施設の種類にもよりますが、入所時の一時金で一千万単位のお金が必要になるところもあるため、実家の不動産売却ができるかどうかは重要なところです。一時金がないところ(あるいは一時金のないプラン)であれば、比較的月々の入所費用が高額になるため、実家の賃貸ができれば費用面では大きな助けになります。

不動産の名義人である親御さんがすでに認知症になっている場合は、不動産売買や賃貸の契約を有効に行うことができません。

成年後見人等を家庭裁判所が選任し、成年後見人が代わりにそういった契約を行うことになります。

成年後見申立てに際する注意点

そこで申立てを行うわけですが、以下の点にご注意頂きたいと思います。

  1. 申立人が希望する後見人の候補者(申立人本人を含む)が選ばれるとは限らない
  2. 後見人が不動産の処分を行うとは限らない
  3. 不動産が本人の自宅の場合は、売却するためには家庭裁判所の許可が必要

という点です。

とりわけ2.は、申立人の方から反発の声をよく聞きます。

そもそも親の不動産の処分のために申し立てたのに何で!ということです。

成年後見制度は本人を守るためのもの

しかしながら、このことは後見制度に関する誤解が原因です。

後見制度とは、認知症や知的障がい・精神障がい等によって判断能力を失った方のために、成年後見人が代わって財産管理などの判断を行う制度です。

つまり、選任された後見人が、本人の財産状況から考えて、不動産の処分が必要ないと判断すれば、処分は行われませ

預貯金等の流動資産が十分あり、月々の収支が黒字になっているような場合は、不動産の処分をする必要がない場合もあるわけです。

後見人が不動産の処分をする必要がないと判断すれば、申し立てた人にとっては申立ての動機がなくなったわけです。

しかし、成年後見人は一度選ばれれば、本人の判断能力が回復するか、亡くなられるまでは続きます。

なぜなら、本人が判断能力を失っている現状は変わりなく、そうであるならば代わりに判断する成年後見人が必要だからです。

また、後見人が親族ではない第三者であった場合は、後見報酬が発生します。これは、本人の財産にもよりますが、おおよそ月に3万円前後とされています。

あくまで本人のための成年後見

以上のことが理解されずに申立てが行われ、第三者が後見人に選任され、不動産の処分に必要性なしという判断がなされた場合に、後見人と親族が衝突するというケースが相次いでいます。

それどころか、申立てに関与した法律家が以上の説明を怠っている、あるいは誤った説明をしているケースもあるようです。

成年後見はあくまで本人の財産を保全するための制度です。不動産売却のためだけに、成年後見制度を利用するケースは多くありますが、以上を踏まえ一度ご検討頂きたい、というふうに思っています。